ホーム » 十和田八幡平国立公園の四季 » 十和田八幡平国立公園でハイキング » 安比高原の草原とブナの森
安比高原に隣接する森林では、約80年前に炭の製造や漆器の木地に使われていた木々の子孫であるブナが現在も繁茂しています。これらの木々を用いた漆器の製造は、今日でも地元の伝統工芸として受け継がれています。
安比高原での、池や滝を眺めながらの快適な2〜3時間の散策を楽しむには、特別な装備や経験は必要ありません。また、安比高原は八幡平の一部であり、著名な岩手山・八幡平・安比高原50kmトレイルが岩手山とこの地域を繋いでいます。
岩手県北部のこの地域は、もともとは現在のような風景ではありませんでした。千年以上前、安比の丘陵地は深い森林に覆われていました。しかし、915年の火山噴火の影響で大部分が火災により焼けてしまい、その後、何世紀にもわたる復興の中で、この地は農業地として利用され、草の丘は労働馬の牧草地となりました。15世紀から16世紀にかけての室町・戦国時代には、ここで飼育された強い寒立馬(かんだちめ)が戦場で活躍しました。
この田園風景で放牧されている馬の中には、かつての戦国時代の戦闘を目の当たりにした馬の子孫もいます。また、ここには絶滅危惧種である小型の木曽馬も見られます。第二次世界大戦後には、安比高原に牛が導入されましたが、安価な輸入品の増加によって地元産の牛肉の需要が大幅に低下し、さらにエンジン駆動の農業機械の導入により労働馬の役割も減少しました。
丘での放牧が行われなくなると、安比高原の植生は再び変化し始めました。ヒメツタやクマザサ、その他の木質植物が草原を徐々に覆い始めたのです。1976年には80ヘクタール以上の開けた草地が広がっていましたが、20年後の1997年にはその面積がほぼ半分の44ヘクタールにまで減少しました。これを受けて、市の当局と林野庁は2006年から草原を再生するための持続可能な方法を研究し始めました。
現在では、地元企業とボランティアの支援のもと、これらの草原には再び在来種の馬が放牧され、森林地帯と開けた草原を含む約180ヘクタールの土地が整備され、訪れる人々が楽しめるようになっています。初心者向けのコースの一つは、前森山(標高1,304メートル)の山頂近くにある安比雲海ゴンドラ駅からスタートし、西森山(標高1,328メートル)を経て中のまきばに至るルートです。さらに、八幡平地域を訪れる人々のために、地元の森林生態やバランスの取れた生活、大自然の楽しみ方を学ぶための多彩な自然プログラムが開発されており、学校の遠足なども歓迎されています。